コガレル ~恋する遺伝子~


 
 そんな課長の空になってしまったグラスが気になって、どこからかビールを調達できないか、長いテーブルの先を見渡した。

「いいんだ、ゆっくりやるから。今日はあまり酔いたくないから」

 立ち上がろうとする私を課長は手で制した。

「それより、どう? 新しい仕事は見つかりそう?」

 首を横に振った。

「実はまだ、何も手つかずで…」

「そうか、」

 その時、綾さんのいた席に見知らぬ男性が膝をついた。

「課長、どうぞ、」

 向かい合って課長のグラスにビールを注いだ。

「葉山さんも、どうぞ」

 私にもお酌してくれるようだから、今ある中身を飲んで空けた。
 新たなビールがグラスに満たされる間に
「こいつ、一課から異動してきた新人、長谷川」課長にそう紹介された。

< 96 / 343 >

この作品をシェア

pagetop