コガレル ~恋する遺伝子~
そんな課長の空になってしまったグラスが気になって、どこからかビールを調達できないか、長いテーブルの先を見渡した。
「いいんだ、ゆっくりやるから。今日はあまり酔いたくないから」
立ち上がろうとする私を課長は手で制した。
「それより、どう? 新しい仕事は見つかりそう?」
首を横に振った。
「実はまだ、何も手つかずで…」
「そうか、」
その時、綾さんのいた席に見知らぬ男性が膝をついた。
「課長、どうぞ、」
向かい合って課長のグラスにビールを注いだ。
「葉山さんも、どうぞ」
私にもお酌してくれるようだから、今ある中身を飲んで空けた。
新たなビールがグラスに満たされる間に
「こいつ、一課から異動してきた新人、長谷川」課長にそう紹介された。