コガレル ~恋する遺伝子~



 その光景を近くで見てた綾さんが笑いながら席に戻ってきた。

「弥生ちゃん、可愛いのに職場で男性に誘われたことないでしょ?」

「ないですね」

 可愛いかは別にして、勤めてから男性に食事に誘われたこともなかった。

「それ、杉崎課長が原因だから」

「へ?」

「課長は弥生ちゃんがお気に入りだから、来る男、来る男、牽制しまくってたのよ」

「まさか」

 仕事を無くした私を元気づけようとしてくれてるんだろう。

「ホントホント。終いには私まで、どんな男に頼まれても、金を積まれても葉山への仲介を受けるな、って釘刺されたんだから」

「もう、冗談ばっかりなんだから、綾さんは」

 ムードメーカーの彼女。
 おだてには乗せられまいとする頑なな私に向けて、大きなため息をついた。

「どっちもキャラ、厳しいな…」



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