極上スイートオフィス 御曹司の独占愛

【現在】


定時上がってすぐ、今日は休みだったカナちゃんと待ち合わせて居酒屋に居た。
昨夜、朝比奈さんのだまし討ちに合った居酒屋だ。


そこで、酒の肴に三年前のひとつひとつ思い出せる限りのことを、カナちゃんに余すことなく喋らされた。


昨日の歓迎会で朝比奈さんにどう丸め込まれたのか、約束していたはずのカナちゃんが来なかったことを問い詰めれば、逆に私が問い詰められる結果になったのだ。


当然と言えば、当然。カナちゃんは私が朝比奈さんと付き合っていたことは勿論、本気で好きだったとも知らなかった。
何がどうしてどうなったのか、三年も経ってから朝比奈さんと私の関係を説明しなければならなくなったのである。


「ちょ、ちょちょ、待って。なんでふたりが客室上がるとこまではっきり見てなかったのよ?」

「いや……ショックでそこまで確かめる余裕がなかったっていうか。それでなくても後をつける行為って気が咎めるもんじゃない」

「それでもさ……後からせめて、問い詰めるでもさ……」


それは、その通りだった。
あの後、私は結局自己完結してしまったのだ。


朝比奈さんと私では似合わない、自信がない。
別れの原因は朝比奈さんに対する不信感よりも、自信喪失と倉野さんにはかないっこないというコンプレックスによる、自滅だった。


だけど、三年経ってもやっぱり思うのは。


「確かめるべきだった、とは思うわよ。けど、じゃあ逆にハイアットのロビーで秘書課の女性と待ち合わせる仕事って、何?」

「う……それは……」

「しかも偶然のタイミングで二回も会うって、絶対何度も会ってるってことだよね」


そういうと、彼女はカルピスサワーのグラスをぎゅっと握って、考え込んでしまった。


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