極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
「え……」
朝比奈さんが、カナちゃんに頭を下げた?
てっきり、良い様に言いくるめられたのかと思ってた。
驚いて目を見開いて、それから手元のカシスサワーのグラスに目を落とした。
さっきから話ばかりで、食事もお酒も余り進んでいない。
黙り込んだ私に言い聞かせる様に、確かめさせるようにカナちゃんの言葉は続く。
「三年前の真帆には無理でも、今はどうなの? 今の真帆なら、どうする?」
あの頃は、逃げ出すしか出来なかった恋。
今なら、今の私ならどうしただろう。
今の朝比奈さんに対しても、あの頃と同じように私は逃げるのか。
もう、身の丈に合わない恋はしたくないと思った。
でもそれならそれで、逃げてばかりいてもいけないのだ。
私は彼女の言葉には答えないまま、温くなったカシスサワーを一息に空けた。