極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
「すっ、す、好きなっていわれても、わかんないです。私みたいなのの、どこが?」
窓の外は、もうじき私のアパートが近づいているのを知らせている。
気恥ずかしいことを聞いてしまったところで、ちょうど良いと思った。
気になるけれど居た堪れない感じの答えしかなかったら、さっさと逃げてしまえる。
「どこ、か。どこと言われても……なあ」
「はっきり言えない?」
「難しいことを聞くよね。好きなところはたくさんあるけど小さなことを入れればきりがないというか……それなら君は僕のどこを好きになってくれたの? 先に好きになったのは僕の方だったのに告白されて驚かされたのは僕だったよ」
「朝比奈さんは好かれる要素しかないじゃないですか……って、違いますよ。好きになったのは私が先ですよ?」
「いいや、僕の方。店舗に居た頃からだから」
きゅ、と少し身体の重力が前に持っていかれ、車が停車した。
アパート前に着いたのだ。
だけどそれよりも、私は朝比奈さんの言葉と表情に釘付けになっていた。
ハンドルに両腕を乗せ、上半身を少し傾けた彼は、こちらを向きながらも目を逸らしていて、それが照れたような仕草に見える。
「え……え、店舗?」
「……参った。ちょっと待って、こういうこと言わされるのって、口説くよりよっぽど照れる」
彼はくしゃっと片手が前髪をかき上げて、そのまま口元を覆った。
そんな一面を見るのは初めてで、言われたことも初耳で、私の方もドキドキしながらもつい、追及してしまう。
「え、だって店舗に居た時なんて、ほとんど接触なかったじゃないですか」
「……その話、しなきゃダメ?」
「ダメです! 聞きたい! っていうかなんで今まで聞かせてくれなかったんですか!」
「いや……普通、しないだろ……」
しますよ!
あれ? しないかな?
男の人は話したがらないものなんだろうか。