極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
「ちょ、待っ」
「ん?」
そのまま強引にキスされるのかと、咄嗟にその手を私の手が避ける。
すると逆に、手首をしっかりと掴まれてしまった。
「何する気で」
「見てわからない?」
「む、無理やりなんてらしくないです!」
「ものわかり良い男のフリはもう止めようかと思って」
首を傾げて私を見下ろす彼は微笑んでいても陰が濃い。
その笑顔に追い詰められているようで、笑って誤魔化そうにも頬がひきつった。
「真帆」
名前を呼ばれ、目を細めた。
傾いで近づく彼と、掴まれてびくともしない手に逃げられないと悟ってしまう。
「ズルいっ……」
朝比奈さん、まだ何も。
三年前のこと、説明してくれてないのに。
ぎゅっと目を閉じて、もうじき否応なく触れるだろう唇の温もりを待ち受ける。心の準備はまだ整わない。
キスされてしまったら、そのまま絆されてしまう気がした。