極上スイートオフィス 御曹司の独占愛

そう考え始めた時、可能性があるとしたら私が誘導された場合、だった。
あの時に、二度とも一緒に居たのは伊崎だ。


だけど、そこで必ず「まさか」と思う。
あの日一緒にいたのはごく自然な流れだったと思うし、伊崎がそんなことをする意味がわからない。


朝比奈さんの行動を、伊崎が把握していたとも思えない。


けど、やはり偶然とも思えないのだ。
ぐるぐると堂々巡りで、眉をしかめて唸っていれば、ふっと笑った気配がして隣を見る。


私が彼の言い分を信じようとしているからだろう。
嬉しそうに表情を緩めていた。


「そのあたりのこともあるしね。聞きたいことも増えたし、近々倉野さんと一度、会うことになる」

「え……専務もご一緒に、ですか?」

「いや。まずは彼女とね。プラス、もうひとり、釣られてくれればいいけど」


……もうひとり。


その言葉で、朝比奈さんも伊崎を疑っているのだとわかった。
三年前、伊崎が朝比奈さんの行動を把握するためには、きっと倉野さんとの接触がなければかなわない。


あのふたりに接点なんて、あったのだろうか?
そしてやっぱり、伊崎がと思うとこれは中々、私には衝撃だった。


信用していたのだ、仕事仲間として、友人として。
理由もわからない。


考え込んでいると、再びシートが揺れる。


「えっ……」


朝比奈さんが再び、私の方へ身体を乗り出してきたのだ。
唐突過ぎて固まった私の目の前に、緩んだシャツの襟元と喉がある。


そこから立ち上る肌と香水の混じった香りに、どきりとした。
同時に、しゅる、と布の擦れるような音がする。

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