極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
伊崎とカフェで別れて、午後からもう一店舗寄ってから会社に戻る。
ロビーで見かけたある人物の姿に、ちくりと胸が痛んだ。
……なんで、こんなとこに重役秘書が。
なんて思ってしまうのは八つ当たりだ。
大方、専務を訪ねてくるお客を迎えるためだろう。
専務付きの秘書である倉野百合は、いつ見ても優雅な立ち居振る舞いで身だしなみも完璧だ。
彼女と比べて、歩き回ってメイクも半分落ちかけているような自分の姿が恥ずかしくなる。
「お疲れ様です」
「お疲れ様」
すれ違いざまに会釈したが、私のことなど視界にも入れず彼女は真っすぐ歩いて行った。
その綺麗な立ち姿は、三年前朝比奈さんと並んでいても遜色なく、誰が見てもお似合いのふたりだった。
朝比奈さんが復縁を迫るとするなら、彼女の方だ。
だから私はただ、上司として彼を迎え入れ、平静を保てばいいだけ。
そう自分に何度も言い聞かせ、私は迫りくる再会に心の準備を整えた。
xデーは
週明けすぐ。
目前であった。