極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
さておき、私は彼女の本音にやっと気がついた。
三年前は、私の僻みで彼女を良く思えなかったのだろうと思ったけれど、そうじゃない。
朝比奈さんに近い場所で仕事をしている私が気に入らないんだ。
私を敵視しているのは、彼女のほう。
あの頃余裕がなくて見えなかったものが、今になって得心がいってすとんと胸に落ち着く。
だけどわからないのは、こっちの方だ。
「……なあ。吉住、ほんとのところどうなの。またあいつと付き合うの?」
伊崎がほんとに、私が朝比奈さんと倉野さんのことを誤解するようにあの場所に連れて行ったんなら、その理由がわからない。
もしかして、伊崎に好意を寄せられてるのか?
とちらりと思ったが、ならこの三年の間に言い寄られるくらいの出来事があっても良さそうだ。
一貫して彼は職場の同僚だった。
「考えてるよ。ってか、伊崎は面倒見良すぎじゃない? なんで?」
ランチメニューはチキンの照り焼きと、野菜のキッシュ。
ナイフで切り分け口に運びながら、ちらりと伊崎の様子を伺った。
「俺は、別に」
「何?」
「お前の失恋を知る唯一の第三者だから見届けてやろうかな、と思ってるだけ」
伊崎は、さっきまでは現状を知りたげにちらちら私の顔を見ていたくせに、私が質問した途端に急に顔を伏せて鶏の照り焼きに集中し始めた。
「……それは、どうも」
「どういたしまして」
うーん。
わからない。
仲の良い同僚として、ずっと気にかけてくれているんだと私も甘えているところがあった。
だけどそれにしたって、特に朝比奈さんが戻って来てから……いや、戻るという噂を聞いてからは、気にし過ぎな気がする。
そして現実戻ってからは、気にはかけてくれているけれど若干距離を置こうとされているような、感覚もあった。
昼にくっついてきたのだって、今日は久しぶりだ。
「……もうぐちょぐちょの泣き顔見るのはきもいしな」
「……うるさいな。もうあの程度じゃ泣きませんよ」
わからないやつだけど。
悪いヤツじゃないとは思うんだ。