極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
伊崎は、三年前私を倉野さんと朝比奈さん達のいる場所へ誘導したんじゃないか、と朝比奈さんは思ってるのだろうけど、そんなことをする理由が見つからない。
それに、専務と朝比奈さんが会うことは極秘だったのなら、スケジュールを知ることが伊崎に出来たとは思えない。


やっぱり、ただの偶然だったのじゃないだろうか。


昼食後、伊崎とはそれぞれのエリアに別れ外出し考え事は一時中断、仕事に追われた。


定時頃にやっと会社に戻れる目途がつき、このまま直帰しても良かったのだが、私は一度会社に戻ることにした。


昼間のあの仲良さげな談笑の様子が、なんだか頭にちらついて。
倉野さんの表情はすっかり恋する女の顔になっていて、そんな彼女が早々機会を逃すとは思えない。


ふたりで会いたい、なんて。
彼女ならきっと上手に、甘えられる気がする。


仕事に没頭しようとして可愛げをどこかに落っことした私と違って。


帰社する道中、スマホを開いても朝比奈さんから特に何の連絡もない。
昼間のオバカなやりとりが残っているだけだ。


別に会社に戻らなくたって、素直に『今どちらですか』って朝比奈さんに電話ででも聞けばいいだけなのだけど、それが素直にできない私は、まずは会社に戻って朝比奈さんがまだ居るか、確かめようとしている。


気になるけど、悟られて「妬いてる」とか言われるのが癪だった。


オフィスに戻ると、まだ数名ちらほらと姿が見える。
お疲れ様です、と声をかけながらエリア統括のオフィスに向かった。


その途中に、ミーティングルームがある。
ちょうどその扉の真ん前に来た時だ。


「えっ? ちょっ、」


突然後ろから足音がしたか、と思ったら誰かに肩を抱かれてそのままミーティングルームの中へ押し込まれてしまった。

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