極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
外で食おうと勝手に決めて、伊崎がずんずんと歩いていくものだから、私も小走りになってついて行く。
「ちょっ、ちょっと! 伊崎待って!」
会社の外まで出て、やっとこ伊崎を引き留めた。
「あ?」
「さっきの何よ、わざとらしい」
「さっきって何」
すっとぼける後頭部を、バシッと若干強めに叩き倒した。
「いって!」
「勝手に呼び捨てないでよ!」
「あんまりむかついたから牽制しといたんだよ! お前もあんなヤツやめとけって、あっちにもこっちにも良い顔しやがって!」
強めに怒れば、すぐに謝ってくるかと思ったのだが、予想に反して伊崎の反撃に合い面食らう。
このところで一番、イライラしている顔だった。
「えー……と、念のため聞くけどむかつくって誰に」
「朝比奈さんに決まってんだろ! お前にも言い寄ってあの女にまで思わせぶりな態度取って一体何なんだよ」
私が朝比奈さんによりを戻したいと言われていることは、伊崎に詳しくは話していない。
が、言い寄られていると伊崎の中では決定事項なのだろう、当たっているから違うとも言えず言葉に詰まった。
その間もカッカと頭に血が上った伊崎は、私もすっかり忘れていた話を持ち出した。
「吉住、俺と付き合ってることにしとけ」
「は!?」
「そしたらお前に近寄らなくなるかどうか、はっきりすんだろ」
いくらなんでも嘘で付き合ってることにするなんて馬鹿馬鹿しくて、てっきり面白半分の冗談だろうと聞き流してしまっていた。
それでさっきの”真帆”呼びか、と呆れて開いた口が塞がらない。