極上スイートオフィス 御曹司の独占愛

朝比奈さんほど強くはないけど、あまり可愛らしい飲み方をしてない自覚はあって、若干拗ねていれば膝の上に置いた携帯が震えた。



『ひとりで百面相してないで教えろよ。話どうなってんの』


……どんな百面相になってたんだろうか。
不細工顔連発だったろうなということは予測がついて、恥ずかしさから頬を手で覆う。


それより、伊崎の席ではやはり少し遠くて聞こえ辛いらしい。
かといって詳しく会話を再現するわけにもいかず今はまだ単なる雑談だと、簡単に返しておく。


その間にも、倉野さんのアピールは続いていた。


「ご存知です? ここのバーのカクテル、すごく美味しいんです」


あからさまに誘ってるように聞こえるのは私の気のせいでしょうか。


ぎゅっ、とつい眉間に眉を寄せてしまい、伊崎に見られたくなくてすぐさま手で隠した。


多分、倉野さんはこの後、もしくは食事の後なり、朝比奈さんがそのバーへ誘ってくれることを期待したのだろう。
この話の流れなら、きっと誰でもそう期待する。


けれど、朝比奈さんはさっきまで彼女に合わせた受答えをしていたのに、突然引いた。


「そうですか。では今度、プライベートで行ってみることにします」


これには、さすがに聞いてる私もかくんと拍子抜けというか、倉野さん本人に至っては逆に焦ったのではないだろうか。


「あっ、ごめんなさい。私ったら、お酒の席に誘うような言い方をしてしまって、そんなつもりじゃなかったのですけど」


少し可哀想なくらいにしょ気た、力ない声だ。


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