極上スイートオフィス 御曹司の独占愛

今日のところは上手いこと宥め、休みのようで本日不在の店長に普段の育成状況を聞いてみることにして、その場は治めた。


四月から暫くは、新入社員のことでヒヤヒヤさせられることが増える。
業界的には比較的暇な時期だが、気疲れする内容で呼び出されることも多い。


溜息を吐いて、軽く肩を回し気持ちを切り替える。
どうせここまで来たのだからと、もう一件顔を出すことに決めた。


ここから少し足を延ばした駅にある東武百貨店にも、新入社員がひとり配属されているからだ。


吉住真帆。大卒で入社し、いずれは本社に戻ってくることになっているが、最初の一年は店舗勤務と決められている。


彼女はどうやら少々慌て者の衒いがあって、緊張するとそれが顕著に表れた。
百貨店の入店テストの時もハラハラさせられたけれど、根は素直で生真面目な性格に見受けられる。


店舗に入って、何か不安なことやわからないことがあれば連絡をくれればいいから、と僕のエリアに配属された販売員には等しくそう伝えてあるけれど、彼女はまるきり音沙汰無しだった。


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