極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
仕事は順調かと聞くと、彼女は随分楽しそうにラッピングを教えてもらったことや熨斗紙の種類に詳しくなったことを話してくれた。
心配無さそうだと安心しつつ、接客の方はどうか、と尋ねてみれば彼女はあっけらかんとやってないと答えたのだ。
「やってない? 一切接客はさせてもらえてないってこと?」
「あ! いえ、そうじゃなくて! 最初の二日目くらいは少ししたんですけど……私がお客様の前だとひどく慌ててしまって、だから」
「そんなものは経験積まないとどうにもならないことだよ」
「も、もちろんです。なので、副店長の西口さんが練習相手になってくださってロールプレイングはやってます。すみません、早く接客できるように頑張ります」
彼女はそう前向きに言うけれど、少し表情に翳りが見えた。
「すみません……倉庫整理とかラッピングとかが結構楽しくて……原材料とか見てたり美味しそうだなと思って見てるといつのまにか時間も過ぎちゃってるんですよね」
あはは、と彼女は笑うので僕も一応「そう」と笑って返しておいたが。
あんまり笑いごとでもない。
よほどひどい失敗でもしたのだろうか、それにしたって入店して一か月、もう少し実践で接客を経験させてやってもいいだろう。
力仕事は嫌だと駄々をこねられるのもうんざりするが、嬉々として倉庫整理ばかりをしているのもそれはそれで問題だ。
彼女はそのうち本社に戻ることは決まっていても、接客の経験はしておくべきだ。
それに、接客を一切してないということは、彼女は一日ここで力仕事や雑用ばかりを押し付けられているということではないのか。
これはどういうことかと、彼女は店頭に一度返して店長に詳しく聞いてみることにした。