極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
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別れを受け入れて三年、やっと取り戻した彼女が今腕の中にいることが夢のような気がして、僕は翌朝目が覚めても、中々彼女を離す気にはなれなかった。
ベッドの中でせがまれて、約束していた彼女を好きになった頃のことを話して聞かせる。
片手で腰を抱き寄せて、もう片手は飽きもせず彼女の髪や肌を撫でたがった。
どれだけ触れても足りないのだから仕方ない。
「え……全然わからない。それのどこに好きの要素があるんですか」
首を傾げる彼女の首筋には、昨夜僕が付けた独占欲の現われが赤く生々しく咲いている。
話したと言っても、僕のささやかな嘘はまだ、嘘のままだ。
てっきり店長が店舗にいるうちにバラシていくだろうと思ったのに、それもなく、数年も前のことを今更話題に出す誰かもいなかったようだ。
いつかバレたらこっぴどく怒られるか拗ねられるか、覚悟はしているが僕から話すつもりはない。
あの得意げな横顔は、僕のお気に入りだ。
それが見られなくなるのは勿体ない。
「倉庫整理に精を出す後ろ姿とか言われても……恥ずかしさしかないんですが……そんなことありました?」
「ほらね。きっと覚えてないと思ったから言いたくなかったのに」
そこはいわば真帆に惹かれ始めたきっかけに過ぎなくて、店長に言われた『僕好みの人材』だとか、いろんな要素が僕の興味を引いた結果、僕はいつの間にか恋に落ちていた、というのが実のところだ。
真帆は出会った最初の頃のことなど、きっとうろ覚えでしかないだろうと思ったら案の定だった。
面白くなくて、彼女の腰に回した腕にぎゅっと力を込めた。
「大体君は、いつも冷たい。再会した時も僕がわざとらしく間近を通るまで、こちらを見ようともしなかったし」
「別にそんなつもりは……ってやっぱりあれ、わざとだったんですね」
「全然顔を向けなかったでしょう。僕はあの日、やっと会えると思ってどうやって話しかけようかそればかり考えてたのに」
「仕事中じゃないですか。仕事のことを考えてください」
すげない返事も、真赤に染まっていく彼女の耳が照れているのだと教えてくれて、僕は悪戯心を刺激される。