極上スイートオフィス 御曹司の独占愛


「ははっ、そうか」

「笑い事じゃないですよ!」



売上予算は前年度の数字を元に算出される。
つまり、クリアすればするほど翌年の目標値も上がるのだ。


最初は良いエリアをもらったなと私と伊崎を羨ましがってた同僚も、予算案が出る頃には同情に変わっていた。



「ひどいですよ、あんな数字!クリアできるはずないじゃないですか!」

「翌年の予算案は確かにキツかっただろうね」

「キツかったなんてもんじゃないです。しかも朝比奈さんの後釜ってことで、店舗には散々見下されるし舐められるし」



ほんっとに、悔しかったんですよ!


と、つい机の上で拳を握った。
だけどそれを見た彼は、くすりと笑ってこう言うのだ。


「そう簡単に僕を越えられてもね」

「でも越えることを前提に数字出してくるじゃないですか」

「そこなんだよね、僕も現場の時は頭を悩ましたけど」


うそん。
毎年涼しい顔でクリアしてたイメージしかないですよ。


よっぽど疑わしい目をしていたのだろうか。
彼は、苦笑いをして



「ほんとだよ」


と言い、再び視線を資料に戻す。



「よく食らいついてる方だと思うよ、君も伊崎も」

「えっ」



その言葉に、ぴょこんと背筋が反応し、つい前屈みになった。
彼の手の中に、もしかして伊崎の資料もあるのだろうか。



「あの。伊崎のも、そこにあるんですか?」

「うん。元は同じエリアだからね、参考に」



え。
めっちゃ気になる。


結果は毎年オフィスに表示されるけど、三年の推移となると伊崎のとこまで把握してない。

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