極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
覗きこもうとする私に気付いて、彼は手で少し資料の端を持ち上げ隠してしまった。
「見たらダメ」
「えっ、あ、すみません。でもちょっと、知りたいなー、て」
「何を?」
「だから、伊崎のエリアはどうなのかなー、て」
だって。
やっぱり、負けたくないし。
そわそわと、見えなくされてしまった朝比奈さんの手元にいつまでも視線が向かってしまう。
「まあ……二人ともよくやってるとは思うよ」
「伊崎も必死だったですから」
そんな当たり障りない言葉でなく、どっちがより上かとかその辺を知りたいんだけどな。
ちなみに、私は引き継いだ翌年の予算は落としてしまっている。
伊崎はどうだったっけ?
思い出そうとしていると、朝比奈さんから今度は伊崎とのことを振られた。
「ふたりは以前から切磋琢磨してたよね。割りに助け合うとこもあるし。今も協力しあってやってる?」
再び彼が視線を資料に落とす。
声が少し低くなって、急に空気が気まずくなったような気がした。
「……ですね。エリアが隣なので互いに声をかけやすいので」
「そう」
そこで話が止まり、とんとんと資料をはじく指の音だけが響く。
その音が不機嫌の現われのようで、おずおずと私から声を発した。
「あの……まずかったですか?」
「ん?」
「エリアが近いからって、あまり協力するのは良くないですか? 一応、マネージャー同士はライバルともいえるわけだし」
馴れ合うよりは競い合えとか、そういう方向のほうがいいのだろうか?
不機嫌の理由を探したがそこしか見当たらなくて、尋ねてみたのだが。
再び顔を上げた彼は、眉を下げて微笑んでいた。
「そんなことはないよ。ただ……」
「なんですか?」
「楽しそうに、仕事の話をするな、と思って。あの頃は、一生懸命なのはいいけど、背伸びをしてた印象だったから」