極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
【現在】
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朝比奈さんは、あの頃と変わらず優しく、仕事がどれだけ忙しくてもさらりとスマートにこなしてしまう。
エリア統括、ということで店舗と直接関わらなくはなっても、細やかな相談にも嫌な顔せず応じてくれるので、人望も集まる一方だ。


マネージャーサブの若い女の子たちがきゃあきゃあ言ってて化粧が心なしか濃くなった。
今日の香水に迷うよりも仕事しやがれこのやろう。


けどまあ、そういうとこも以前と同じだ。
昔は私もその中のひとりであったわけだしそれはいい。


だけどどうにも、一点、違和感の拭えないところがある。


「これ、こないだの宿題。催事の商品のことだけど、ラインナップを変えるのは構わないけど、工場でのラッピングはやめた方が良い」

「あ。これ、考えてくれてたんですか」


店舗周りに向かおうとオフィスを出てエレベーターに向かう途中、朝比奈さんに呼び止められた。
彼の手には、私が迷っていると言った催事の商品企画の書類があった。



「やっぱり……工場でのラッピングってどことなく愛想ないですよね?」

「百貨店の催事は、例えセール商品でも手土産に使ったりするし見た目に惹かれて買う客も多い。販売員に暇を見つけてやってもらった方が仕上がりは各段に良くなる」

「けど、販売員に接客の合間を見てやってもらうのも大変だろうと思うんですよね……」


少しのラッピングならともかくとして、一週間の催事の分をすべてとなると。商品手配を早めにしたとしても販売員の負担がなあ。


「吉住も時間見つけて手伝いに行くのは? ラッピング得意だろ」

「あ。そうか……」


私なら接客気にせずバックヤードに籠って作業できるし、集中すれば終業後に立ち寄る程度の時間でもかなりの数を作れる。


一週間くらい残業すればなんとかなる。


「ありがとうございます。やっぱり、可愛いと思って手に取ってもらえる方がいいですしね。ちょっと頑張ってみます」

「僕も手伝いに行こうか」

「ええっ!? エリア統括にそんなこと頼めません……って朝比奈さんラッピング苦手じゃないですか」


こうして、仕事の話をしている時は、いい。
不自然にならずに、きちんと上司に接するみたいに出来てると思う。


けど。
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