極上スイートオフィス 御曹司の独占愛

「僕もたまには店舗の空気を吸いたいんだよ。それより吉住」

「はい?」


話しが切り替わるタイミングで、書類を差し出され受け取ろうとした。
が、掴んだ書類を彼も離さない。


「今夜、来るよね」


無駄に艶を増した声に、こちらも無駄に心臓が跳ねてしまう。
なんだか意味ありげなセリフに聞こえるかもしれないが。


「……行きます」


あくまで、上司の歓迎会に出席するというだけのことだ。


「良かった。まさか上司の歓迎会まで逃げたりしないだろうとは思ったけど、念のため」

「べっ、別に逃げてません」

「ずっと僕を避けてる」


違和感を拭えない、一点はここだ。
前はこんな風に追い詰めるような言い方をしたりしなかった。


これを、微笑みを絶やさずにやってくるから、余計にコワイ。


「き、気のせい、ではないですか」

「そう。なら、今夜はゆっくり飲みながら話せるね」


超逃げたい。


ふたりきりってわけじゃないけど、嫌な予感しかない。


なんでこんな事態になったのだろう。
朝比奈さんが戻って来ても、ちゃんと上司と部下としてやっていけるはずだった。


彼が今更もう、私に構ったりしないと思っていたからだ。

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