極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
「一番に東武? そこまでついてってやるから待ってろよ」
「えっ!? いいよ大丈夫だから」
「いいから待ってろって。俺も店舗周りのついでだから」
私が断るのも聞かず、伊崎はさっさとデスクに戻り外出の準備を始めてしまった。
ついでって言ったって、エリアが違うからどうしても逆方向になるのに。
ビジネスバッグを持って再びこちらにやってきた伊崎に、もう一度断りを入れようと思ったのだが、彼はショップバッグのひとつをさっさと手に取ってしまった。
「ほら、行こう」
「……ありがと。助かる」
仕方ない。
後でランチ時にでも落ち合って、奢るとしよう。
頭を下げると、彼はにっと唇の端を引き上げて、私が思ったことと同じことを言った。
「その代わりランチ奢ってな」
「えー」
最初からそのつもりだったのに、相手から言われると途端にあまのじゃくになるのは私の悪い癖だ。
もうちょい素直に可愛らしい態度でも見せられたら、そろそろ二度目の恋くらいできていたのかもしれないが。
いかんせん、素直じゃないのが私の標準装備だ。