極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
「ちょっと待たせたかな」
確かに待ったが、私が待っていたのは決してこの人ではない。
ぽかんと口を開けた私の目の前で、彼、朝比奈由基はここに来るのが至極当然の如く立っていて、私のすぐ近くまで歩み寄る。
「な……なんで。カナちゃんは?」
「ん? 今日は帰るって」
なんで!?
カナちゃんは、約束を何の連絡も無しに反故にするような子では、ないはず!
その時、手の中に握ったスマホが、ブブッと短く振動した。
メッセージの着信だ。
表示を見れば、カナちゃんのものだった。
『ごめん!』
というたった一言と、土下座のスタンプが送られていて、それを見た瞬間に悟った。
「カナちゃんが買収されたあ!?」
「買収って、ひどいな」
くすくすと笑うその声は、害のないような優し気なものなのに、一体何をどうしてカナちゃんを言いくるめたのか。
不信感いっぱいに見上げる私の視線を、彼は苦笑いで受け止める。
掘りごたつに足を突っ込んで座る私の真横まで近づくと、その場にしゃがんで膝の上で腕を組んだ。
「やっとつかまえた」
狭い空間で、私よりもずっと背も高く広い肩幅の彼に、圧迫され。
逃げ場はないと、観念するよりほかなかった。