極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
「って……な、なんで真横に座るんですか!」
すとん、とそのまま腰を下ろした彼に、仰天して声を上げる。
ふたりで飲む場合、普通はテーブルを挟んで向かいに座るものだろう。
たとえそれが、仲睦まじい恋人同士だったとしてもだ。
「だって、近くにいないと逃げられそうだし」
「に、逃げませんから向いに座ってください、でないと……」
店員がオーダー取りに来たら、絶対変に思われるこの位置関係!
早く離れて、と思ったのだが遅かった。
「失礼しまーす! オーダーよろしいですかあ!」
威勢のいい声で入ってきた店員は、一瞬だけ変な顔をしたが、すぐに笑顔に戻ってオーダー用の端末に視線を俯かせた。
あたふたしている間に、にゅっと私の目の前を朝比奈さんの腕が通過して、ドリンクメニューを取って広げた。
「ほら、早く決めないと」
「え、あ、」
「俺はビールでいいけど真帆は? チューハイにしとく?」
「ちょっ、な、」
ふたり並んで仲良くドリンクメニューを見る構図、この人散々飲んでたけどまだ飲むの? だとか、しかもさらっと名前呼びされ、どこから突っ込んでいいやらわからなくなった。
「……カシスサワーで」