極上スイートオフィス 御曹司の独占愛

「昔は素直で可愛かったのに」

「可愛げなくなってすみません」


これで文句はないだろうと、向いの席に移動した時、再び引き戸が開いた。
店員が、もう一つオーダーしていた生春巻きを持ってきたのだ。


「お待たせしました、生春巻きです!」

「ありがとう。カシスサワー追加で」


と、店員に向かって言ったのは私じゃない。
朝比奈さんだ。


「えっ!」


店員は当然、「かしこまりましたぁ」とオーダーを聞き入れてさっさと下がってしまい、断り損ねてしまった。


「まだ飲めるよね? 真帆の限界くらい覚えてるよ」


にっこりと笑うこの人の調子に、引きずり込まれてはいけない。
あまりさらさらと飲むから、いつのまにかこっちも飲まされるのだ。


「あと、一杯だけです」

「いいよそれで。向こうでは中々、飲む相手が見つからなくてね。今日は久しぶりに気持ちよく飲めてるよ」


この後、彼がどんな話を切り出すのか。
私は随分身構えたのだけれど、それが伝わったのだろうか。


飲みながら彼が話したのは、大阪での出来事など仕事上での他愛無い話題ばかりで、そこからの彼は至って上司の顔だった。


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