極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
ケーキ、と聞けばぱっと顔を上げて、つい朝比奈さんの周辺を探してしまう。
だって、ふたりで食べられるなら嬉しいと思ったのだ。
だけど、今目に見えるところにはそれらしいものは見当たらなかった。
「車にあるよ」
「そうなんですか、嬉しい」
「ホールケーキだからさすがにここではね。うちに来る?」
片手で頬杖をついて、彼が微笑む。
”うちに来る?”
その言葉に、固まった私を優しく見つめている。
私と朝比奈さんは、まだ日も浅いことも忙しいこともあり、休日に待ち合わせるようなデートらしいデートは一度しか出来てなくて、未だキスだけの関係だった。
朝比奈さんの言葉の意味を噛み締める度に、頬が熱くなる。
そんな私の頬に彼の手が伸びて、親指が肌を撫でた。
「おいで」
静かな休憩室に響いた甘い囁きに、小さく頷くことしかできなかった。