極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
肌を撫でる、その手が際どい場所に近づくほどに、私の身体が熱を貯め、それを持て余して何度も何度も、身を捩る。


身体中に触れるキスも、熱い手のひらも、行為の全てが優しく羽で撫でるようで、気持ちよいけどもどかしい。


そのもどかしさがやがて苦しくなって、小さな喘ぎだった声はいつのまにか懇願するような鳴き声となった。


「……真帆。いい?」


そんな風に耳元で尋ねられても、もう朦朧としてお腹の奥も頭の中も溶けてしまっている。
ただただ、この疼く身体をどうにかして欲しい。


私は、必死で頷くしかなかった。



初めて、ではなかったけれど、それほど慣れないままに終わった大学時代の関係からは日が経ちすぎていたのだろう。
丁寧に愛撫され柔らかく溶けた身体でも、彼を受け入れるには引き攣れるような痛みを伴い、僅か顔が歪みシーツを掴む。


その手の指を、彼の手が包み親指で手のひらを撫でてやんわりと解かせる。
そのまま手首を掴んで、私の両手を自分の首に回させた。


「……つらい?」


熱く、浅い息遣いに混じって、彼の擦れた声が聞こえた。
……少し、余裕がない?


彼でもそんな風になることもあるのだと、頭の片隅でちらりと思う。
それが少し、嬉しかった。


部屋に満ちる、荒い息遣いと、汗ばむ肌の触れる音。
薄暗い視界の中で、オレンジ色の間接照明の灯りが揺れていた。


違う、揺らされているのは私。


甘く優しすぎる愛撫とは裏腹な、強く突き上げて揺すり上げる熱に私は溺れ、何度も何度も、昇りつめた。


私を慈しむ体温を独り占めしているのだと、この時はまだ信じていて。
ただ、あまりにも幸せ過ぎて、幸福な夢の中にいるようだと、そんなふうに思っていた。


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