極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
ネガティブ思考の連鎖に嵌まり、ますます居心地の悪くなる腕の中からなんとか抜け出したいと小さく身を捩って主張した。
しかし、先ほどまでより緩んではいるものの、私の背後、腰の辺りで彼はがっしりと両手を組んでいて、離すつもりはないようだ。
そうして探るように私の顔を覗き込んでくる。
「真帆、ちゃんと言って。どういう意味で言ったの」
「なんでもないですってば」
「真帆」
余計な一言を言うんじゃなかったと、後悔した。
彼は、私の言葉を引き出そうと追及の手を緩めない。
その上、こう言うのだ。
「……僕はいつから、そんなに信用を失ったのかな」
困ったように笑う。
その表情に、かっと頭に血が上った。
「よく、そんなことが言えますね」
信用を失う覚えがないって、真剣にそう思っているのなら。
今なら本当に、この人のことを大嫌いになれると思った。
「朝比奈さん、私以外に会ってる女の人がいたこと知ってます」
はっきりとそう言えば、少しは狼狽えるかと思った。
だけどそれでも彼は眉を顰めて困惑するばかりで、それが更に私を苛立たせて、結局私は口を滑らせた。
「倉野さんとは、今はもう会ってないんですか」
そこで初めて、朝比奈さんの表情が変わった。
はっと目を見張り、腰に回された手が一瞬緩んだ。
それが朝比奈さんの動揺を現しているのだと嫌でも気が付いて。
そのことに、私の方がびっくりするほど……息が出来ないくらい、苦しくなった。