極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
話せば、あの日みた映像が頭の中に映し出されて、尚更私を苦しめる。
だから言いたくなかったのに、こんな惨めなこと言わせて欲しくなかったのに。
「二回?」
彼が焦りを滲ませながらも訝しい顔をする。
ここまで来て何をしらばっくれるつもりなんだろう。
「見間違いなんかじゃないです!」
いよいよ涙の気配を隠せなくなって、私は力いっぱい身を捩って逃げようとする。
すると、ぐうっと一層強く掴まれた腕に、痛みが走った。
「痛っ!」
その悲鳴に、力を籠め過ぎたと気付いたのだろう。
彼が、はっと我に返った様子で、急に手を離した。
そのせいで、私は後ろにたたらを踏んで、その拍子に右足首を変な方へ捻ってしまった。
「あっ!」
「危ない!」
痛みのあまり、膝が立たなくて転びそうになる。
それを再び伸びてきた朝比奈さんの手に支えられた。
「悪かった。挫いたんじゃないか?」
朝比奈さんが私の身体を支えながら、右足を気にして腰を屈めようとする。
だけど、そんな心配はいらないから早く離して欲しい。
彼の手を押し退け少しでも距離をとろうとしながら、私は冷たく言い放つ。
転びそうになって会話が途切れたのが良かったのか、少し頭が冷静さを取り戻していた。
「大丈夫です。もう帰りますから離してください」
「まだ話は終わってない」
「終わりましたよ、三年前にとっくに」
二人を見たことがきっかけで、私は彼の恋人であるはずの自分に自信を失っていった。
並ぶ二人はあまりにもお似合いで、きっと誰の目にも理想的な恋人同士に見えただろう。
そう思えば追及する勇気が出なかった。
その時に、私の恋は終わったのだ。