極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
「やりなおすって……」
まだそんなことを言うのか、と呆れた顔しか浮かばなかった。
玄関扉を背に、彼と向かい合う。
「ひとつだけ言い訳をさせてもらうなら、嘘をついたつもりはなかったよ」
「え?」
「専務とお会いして、仕事の話に違いなかったから、そういう言い方をしたんだったと思うよ。さすがに三年前の会話を詳細には思い出せないけど」
仕事の話だったから?
だからまっすぐ帰ったと言った、そういうこと?
そんなわけない、とどうしても否定的な考えが頭に浮かぶ。
同時に、記憶を辿った。
自分はどんな聞き方をしただろうか、彼の言葉のニュアンスは?
あの頃の会話を思い出そうとしたけれど、どうしても嘘をつかれたというショックばかりが際立って、上手く思い出せない。
眉をひそめて考えながら、朝比奈さんの表情をじっとみつめる。
すると、彼が苦笑いをした。
「真帆には確かめようがないことを言葉で説明しても疑いしかない。よくわかったよ、僕はまず君の信用を取り戻すところから始めないといけないみたいだ」
あっけらかん、と意外に明るい表情で言われてぽかんと見上げた。
「……上司としては信用してます。何もそこまで」
もう、終わったことでいいじゃないか。
朝比奈さんなら他にいくらでも……そう、倉野さんでなくたって、いくらでも寄ってくる女の子はいる。
なのになんで、そんな。
「めんどくさいでしょう、他にいくらでも」
「君以外はいらない。言ったよ、ここに帰ってくることだけを考えてた」
とん、と私を囲うように彼の両手が置かれた。
目尻が少し下がった、優しい微笑みがすぐ目の前にある。
「次に会ったら、二度と離さないと決めてた。君がどんなに嫌がってもね」
その言葉と同時に、目尻に軽くキスをされた。
瞬間、私は強く目を瞑りびくっと肩を震わせる。
「泣かせてごめん」