極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
「すみません、私も忙しかったんですよぉ……」
「だから、もういいですって」
口元に拳を当てて、眉を八の字にして凹んで見せる。
……ちょっと。
気持ち悪いんだけど。
どうした、何があった佐々木!
と対処に困っていると、真後ろから朝比奈さんの声がした。
「吉住、何かあった?」
これか!
と思った。
「すみません! 私のせいなんです。仕事が遅くて、吉住さんを苛つかせちゃって」
うるる、と滲みだす涙に盛大に溜息が出る。
そんな私を見て、佐々木さんの泣き真似に磨きがかかった。
「いいんです。いつもは自分でやってたのに、頼んで申し訳なかったです」
面倒くさい状況になる前に、さっさと折れてしまおう。
だけどむかつくので、いつもは自分でやってるんだということだけは主張して彼女の手から領収書の束を受け取ろうとした、時だった。
それを制止するように、朝比奈さんが言った。
「吉住。いつも自分でやってるの?」
「え? はい。まあ、自分でできることですから」
「領収書だけ?」
私に向かって朝比奈さんの眉が顰められ、戸惑いながら佐々木さんから朝比奈さんに向き直った。
何かまずいだろうかと思いながらも、ありのまま説明する。
「……いえ。書類作成とか、他の手配とかもできるだけ自分でやるようにしてますが」
そう言うと、彼の目が一層厳しいものに変わった。