極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
「何の為にマネージャーと補佐に別れてると思ってるの? 任せるべき仕事は任せて、マネージャーはその労力を店舗に向けるべきだ。その為の補佐の仕事だ」
思いの他厳しい声でそう言われ、自然と背筋が伸びた。
けれど、言われた言葉に少しの反感もあった。
もちろん、彼の言う通りだ。
だけど仕事を常に後回しにされるようでは、余計に私の負担になってストレスも溜まる。
だから今の現状なのだと、それをありのまま言うのもまた、佐々木さん達サブの反感を買いそうだった。
「申し訳ありません。自分の領収書だったので私もそれほどせっつかなくて、連絡があるまで気付きませんでした」
「領収書だから、という問題じゃないよ。吉住がサブに普段から仕事を回してない、ってことが問題なんだ」
返す言葉も見つからず、頭を下げる。
こうなってしまっては、今後はちゃんとサブに回さないといけない流れだろう。
佐々木さんたちがこれくらいのことで改めてくれるならいいのだが……そううまくはいかないだろうなと、憂鬱を抱えた時だった。
今度は、朝比奈さんの声が佐々木さんに向けられた。
「佐々木さん。そもそも忙しいというのは、先週頼んだ仕事がまだできてないことの言い訳にはならない。一週間も依頼された仕事が滞ってる状態を、どう考えてたの」
それまで目を潤ませてしなを作っていた佐々木さんも、さっと顔色を青くして背筋を伸ばす。
そして、しどろもどろに言い訳を始めた。
「で、ですが……私も仕事がたくさんあってどうしても回らないことも……」
「何の為にこれだけの人数がいる? 連携は? ヘルプは求めた? 最悪、遅れていることを吉住に連絡した?」
「い……いえ」
「請け負った仕事には責任を持つ、いつのまにそんな当たり前のことも出来なくなった? このフロアは」
ぐるり、とフロア全体を朝比奈さんの視線が廻る。
ざわめきが一瞬にして消えて、槍玉に上がってしまった佐々木さんは真っ赤な顔で俯いていた。
「彼女に限ったことじゃなく、マネージャーとサブ、信頼して仕事を互いに任せられるように。ちゃんと全員、気を引き締めて。ミスや遅れがあったらあやふやにはしないこと」
朝比奈さんは全員に向かってそう言うと、再び私に目を向けた。
「吉住、ミーティングルームに来てくれる?」
ぴきっと凍り付いてしまったオフィスに、一転して柔らかくなった声が響く。
そうして私の返事も聞かずに、彼はミーティングルームへ向かってしまった。