極上スイートオフィス 御曹司の独占愛

「まさか」


まったくイメージが湧かなかった。
厳しいことは言っても、フォローも忘れない人だった。


いくらなんでも、その言われ様と朝比奈さんが私の中で繋がらない。


「……大阪支社、そんなに大変だったんですか」


そう言うと、彼は微笑みで返した。
肯定の意味だろう。


だけどその穏やかさからは、やはり先程の鉄面皮だの鬼だのという言葉は想像できない。


なんで朝比奈さんがそんな言われ方を、と思うと腹が立ってくるくらいだ。


別れた人、それ以前に、彼は私にとって尊敬できる上司なのに。


「まあ、言われて当然の仕事の仕方をしてきた覚えはあるからね」


だからって、彼が無意味にそんなことを言われるほどに厳しいことを言うはずがない。
私はそう、信じていた。
だから、そうしなければならない理由があったのだと思う。


私達社員には何も聞かされていなかったけど、もしかしてそれほどに、大阪支社の状況は芳しくなかったのだろうか?


だとしたら、そんなところに赴いての三年間は。


憶測に過ぎないが、ひどく胸が痛くなった。
言葉もなく見つめていると、こつ、と靴音がして彼が近づいてくる。


穏やかで優しい、誰からも頼られる人だった。
少なくとも本社ではそうだった。
そんな彼が、悪く言われるなんて絶対おかしい。


その事ばかり考えていたら、いつのまにかオフィスらしからぬ距離まで彼の顔が近づいていて。

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