極上スイートオフィス 御曹司の独占愛


「え?」

「強くなったし、仕事もできるようになった。もめるのが煩わしいからって自分でこなしてしまうくらいに」

「……すみませんてば。もう、」


嫌味を言うために呼び止めたのだろうか?


しませんから。
そう続けながらミーティングルームからさっさと出てしまおうとしたけれど、その前に彼の言葉が被さった。


「嬉しい反面、どうしても三年前と比べてしまうね」


ドアを開いた状態で、半身振り返った。


彼の言葉に、答えることができなかった。
私も同じ感覚だったからだ。


朝比奈さんに、昔の彼との違いを見つけては、動揺してしまう。
今の私は、彼にどういう目で映っているんだろう。


「できるようになったのはいいけど、無理はしないこと。身体を壊すよ」

「……はい。失礼します」


話は終わり、と手を振られた。
身体の心配が上司としてなのかそうでないのか、考えるよりも先に素直に頷いてしまっていた。



失礼します、とミーティングルームを出たものの、私の頭は朝比奈さんの言葉にすっかり支配されていた。


三年前と比べて……私ってどうなの。


仕事は確かに、がむしゃらに頑張った。
今度こそ、何にも負けない自分であろうと、意地になった部分もある。


だけどその分、女としては可愛げがなくなったかもしれない。
今となっては、ちょっとやそっとのことでは泣かない。


恋愛はもう、二の次で良いって思ってたし、だってわかってたから。


いつか、朝比奈さんは絶対本社に戻ってくる……そうわかってたから、その時に少しも進歩のない自分ではいたくなかった。
私にとってあの人は、元恋人である以上に憧れの上司であったのだ、彼のいなかったこの三年間ですら。


だからといって、可愛げのない女になりたかったわけでもなく……もしそう思われてるなら心境は複雑だ。


「つくづく、卒業できてないなあ」

「何が?」

「うわっ!」


考え込んだ末の独り言に、ひょい、と顔を覗き込んできたのは怖い顔をした伊崎だった。

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