いじっぱりなオトコマエ女子と腹黒なイケメン御曹司の攻防
そんな兄弟に御多分に洩れず‥‥‥とは、私はならなかった。
幼稚舎から大学まで続くエスカレーター式の学園に高校から入学した私は当時、「國井兄弟」を含む学園の全てに戸惑っていたし、恋愛にも興味がなかった。

でも私には國井涼介と接点があった。

私の一番の友人が、彼と親戚関係にあったのだ。親友の文香は國井涼介の事を「涼兄さん」と呼んで慕っていたし、彼にとっても文香は妹のような存在だったのだろう。

文香といつも一緒に過ごした高校時代、何故だかいつの間にか涼介もそこに参加していることが日常になっていた。

セレブな生まれの涼介には幼少期からお金と地位の為に寄ってくる人間が多かったらしく、そんなモノにちっとも興味を示さない私に珍しさと心地よさを感じたらしい。不思議がる私にちょっと寂しそうに、それでいて面白そうに教えてくれた。

私も「お金も才能も容姿も、人が羨むものを全部持っているのに幸せじゃない」って事実が衝撃的な驚きで、この幸せなはずなのに孤独な人を近くで観察したいと思った。それは子供特有の残酷な好奇心。そう、私は間違いなく子供だったんだ。

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