いじっぱりなオトコマエ女子と腹黒なイケメン御曹司の攻防
そのまま、涼介は一度も振り返らずに去っていった。
結局、彼を失いたくなくて、裏切りたくなくて行動したのに、涼介とはそれっきり会うこともなくなってしまった。あの日、私が自分で理解できない涙で顔をぐちゃぐちゃにしたのも気付かれないまま。あのキスにどんな意味があったのか教えてもらえないまま。



⌘ ⌘ ⌘



「ごめんねー!急に一人で対応させちゃって、大丈夫だった?」

色んな意味でぐったりと疲れた私が自席に戻ると、朝イチからのクレーム処理から戻っていた梨花さんがハイテンションに出迎えてくれた。

「あ、はい。まぁ、なんとか」

「ありがとねー。すぐ行ったおかげでこっちは上手くいったの。もー、柏木ちゃんには感謝しかないから、お土産買ってきたからね!」

どうやら、絶望的な足取りで出て行ったのに思いのほか上手くいったらしい。ウキウキと可愛らしいパッケージの箱を渡してくれた。

「わぁ!アンジェルムのマカロン、私大好きなんです。でも、打ち合わせを一人でやっただけなのに、こんな高価なお土産いいんですか!?」

「いいの、いいの。私も一緒に食べたかったし。それにさ、ミズイさんってちょっと気難しいって噂もあったから」
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