いじっぱりなオトコマエ女子と腹黒なイケメン御曹司の攻防
「同級生だったっけ?」

「うん。いいヤツだったよ」

なのに結局、私は友達以上の好意を抱く事も出来なかった。短い交際期間を経て残ったのは罪悪感と、涼介以外は好きになれないかもしれないという恐怖だけ。

こんな汚い裏切り者は涼介の側にはいられないのに。私は涼介に好意を持ったりしちゃいけないのに。この気持ちを知られたら、こんな風に気遣われる事もなくなるだろう。

胸を満たす苦い思いが長いため息になる。

「気晴らしに付き合おうか?」

それを別れたせいだと勘違いしたらしい涼介が、慰めるための誘いの言葉をかけてくれた。
優しい気遣いも穏やかな声音も半年前と変わらないのに、でも会わなかった期間のぎこちなさを示すように前を向いたまま。

「ううん。大丈夫だから」

並んで座ったベンチ、私も前を向いたままで返事をする。
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