いじっぱりなオトコマエ女子と腹黒なイケメン御曹司の攻防

ただ心の隅に治らない傷を抱えているだけ。



ゆっくり目を開けて、目尻から涙が流れ出るのを感じる。

「夢で言われてもキツいな……」

自分があの時と違う返事をしていたら、と足掻いてしまうからかダメージも大きい。もちろん夢の中だし、過去の事実が変わらないのも分かっているのに、私はこの夢を見るたびに足掻いてしまう。

「って言っても、何年振り？一年以上振り？」

学生の頃はしょっちゅう夢に見ていた。そしてその度に泣いて目覚めるのだ。「どんだけ乙女だよ、自分」と愚痴とため息が一緒に出ていたのも思い出す。
でも社会人になってからは、その頻度も格段に落ちていたのに。

「絶対、昨日のせいだ。ほんっと、最悪」

一人暮らしは独り言が多くなる。特に寝起きはひどい。