いじっぱりなオトコマエ女子と腹黒なイケメン御曹司の攻防
思ってもみなかった状況に頭がクラクラする。

紅栄堂さんは横浜発祥の老舗洋菓子店だ。三代目になってから規模を拡大して、ここ数年で全国的に名を知られるようになった。百貨店への出店も積極的なので、確かにブランドイメージは大切だろう。

でも、でもでもだ。そこまで進んでいるなら、その間に何度も打ち合わせとその後の食事まで付き合っているのに、私に話してもらってないのはおかしい。意図的に話さなかったとしか思えない。

「梨花さんがその話を聞いたのはいつですか?」

「んー……私が聞いたのは最近だよ。一週間前とか」

紅栄堂さんに話を持っていって契約にこぎつける時間はどんなにトントン拍子に進んでも、最低でも一週間。なら、この話は半月前にはもう出ていたって事になる。
< 64 / 118 >

この作品をシェア

pagetop