いじっぱりなオトコマエ女子と腹黒なイケメン御曹司の攻防
「それは、うん。ある」

難しい要望をクリア出来た時、クライアントに喜んでもらえた時、梨花さんに褒めてもらえた時。楽しくって、自分の仕事に誇りを持てた。だから今も頑張っていられる。

「だから、俺が御曹司だからとか、國井の人間だからとか、なるべく考えないで。昔みたいにオプションのない俺個人を見て、そばにいて欲しい」

それはきっと涼介が一番伝えたかった事。両手で私の頬を挟んで、くっと顔を上げて真剣な表情で告げられる。

「涼介個人?」

「そう。俺って人間だけを見てよ。湊の事が好きで、好きだから素直になれなくって八年も遠回りした國井涼介って男を、さ」

そう言ってから「あ、でもあんまり待たないかも」と悪戯っぽく笑った顔は八年前と重なって見えた。
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