いじっぱりなオトコマエ女子と腹黒なイケメン御曹司の攻防

「あ、いや。こっちこそ、ごめん。なんか柏木があんまりにも普通に笑ってるから、ちょっと八つ当たりって言うか……ごめん」

「ううん。私の方が、ごめん」

二人で謝りあって、微妙になってしまった空気の中、沈黙を破って川原くんが口を開く。

「ちょっとさ、気付いてはいたんだ。あーこいつ、きっと心の中に誰か居るんだろうなぁって。付き合ってる時にさ、時々ふっと分かるって言うか」

「そんな！私、ちゃんと川原くんが好きだったよ」

「うん、それは分かってる。二股とか、そんないい加減な事する奴じゃないって事も分かってる。でも昔の彼氏なのか、片思いの相手なのか誰だから分からないけど、柏木の心の中に居座ったままの奴がいて、柏木も追い出そうとはしてないんだろうなぁって、さ」