何度でも
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「美桜(みおう)!」
「ちょっと、どこ連れてくの!?」
卒業式のあと、颯真に無理やり連れて行かれた場所は、河川敷の近くに咲いた綺麗な桜の並木道。
パラパラ…………と桜が待っているが、これもまた幻想的ですとても美しい。
「綺麗……っ!」
思わずその光景に釘付けになった。
「だろ?お前が桜の花好きだって、知ってるし」
「…………何で知ってるのよ、気持ち悪い」
「は!?お前が桜好きだって言ってただろ!………それに、長年一緒にいると何でも分かるし」
颯真とは家がご近所さんで、幼い頃から知っている幼なじみ。
中々素直に慣れずに、照れ隠しでキツい言い方になっちゃうけど、本当はこうやって桜を見に連れてきてくれた事が嬉しかった。
「お前と最後にこうやって綺麗な桜を見れてよかった」
「何言ってんの。まるでもう会えないかのような言い方(笑)たかが卒業じゃん、また中学でも一緒でしょ?」
そんな、颯真の言葉に笑ってツッコミを入れる。
きっと、いつもの冗談だって思ってた。
「……………………颯真?」
だけど、隣にいる颯真の横顔が悲しげで、変な胸騒ぎがした。
「……………何考えてるの?」
自分から聞いといて、答えを聞くのが怖かった。
「…………美桜」
颯真と目が合う。
「俺、引っ越すんだ」
…………………えっ?
引っ越す?
「でも、地元からは出ていかないでしょ?」
大丈夫。まだ可能性はあるよ。
もしかしたら、中学校の近くに引っ越すのかもしれない。
「中学は一緒に通うって言ってたもんね〜!」
颯真の言葉を聞きたくない。
「美桜。あのな…………」
怖い。
「県外なんだ」
ドクン…………ッ!
心臓が跳ね上がるような、そんな感覚。
「父親が県外で働いていているって言ったじゃん?そこに母さんと移住する事になった」
「美紀子(みきこ)さんと?」
《美紀子さんは颯真の母》
「あぁ。父はその近くにあるインディード学園に転校させたいそうで、俺は中学からはそこに通うことになったんだ」
……………インディード学園。
どこかで聞いたことがある。
どこだったけな?
「美桜は分かんないよな。インディード学園とは小・中・高・大一貫の学校。あの辺では有名らしくて、政治家の子供や、社長ご子息など、金持ちの子とかが通うらしい」
颯真は父が県外で会社の社長をしているらしく、この辺ではかなりの裕福な家だった。けど、そこまでだったの?
ちなみに、颯真のお父さんは中々家に帰って来ない為、同級生どころか、幼なじみの私さえ会ったことがない。
「でも、夏休みとか帰ってくるでしょ?」
「……………それは、分からない」
「わ、分からないって………」
「あの学校は全寮制。許可がないと外部の人は中の生徒に会うことが許されないと聞いた。勉強にしても進学校以上らしく、学業にも力を入れてる学校らしい」
「………………………じゃあ、もう会えないんだ。颯真はそれで寂しくないんだ?」
「そんなこと言ってねーだろ!!」
「だって、だって…………」
私は寂しいし、悲しい。
幼なじみとしても、そうだけど、いつしか私にとって颯真が特別な存在になってたから。
男友達みたいな感じだったから、中々プライドが邪魔して素直になれなかったけど、自分の気持ちには気づいてる。
「………私、颯真の何?」
まぁ、普通は幼なじみってのが答えだよね。
だけど………………私が期待してる答えを聞けたら……………。
「……………そんなの決まってんだろ。
好きだって思う大切なやつだよ」