何度でも



「いえ。僕は神無月さんと呼ばせてもらうよ」


意外〜!

女は下の名前で呼んでそうなイメージなのに。

「颯真さんは女性を下の名前でお呼びにならないとは聞いていましたが、私(わたくし)が言ってもダメなのですね」

下の名前では呼ばないんだね。

だから、苗字呼びしか聞かないのか。

「はい。皆さんご機嫌よう!」

そんな話をしている内に英語の先生が到着した。

「Hello,everyone.How are you〜?」

隣はALTの先生も一緒だった。

「「「「I'm fine.How is a teacher?」」」」

「Thank you very much. I'm fine, too〜!」

大きくて、笑顔素敵な男の先生。

「あの先生、名前何て言うの?」

「Mr.Andrea(アンドレア)だよ。フルネームだと、Andrea・Person(アンドレア・パーソン)。母国はイギリス。この先生は中学3年生ぐらいのときにこの学校に派遣されたALTさ」

じゃあ、まだ来て1年目なんだ。

ここに来る前は違うとこでも授業してたんだよね?

戸惑わなかったのかな?こんな学校で。

「はい。それでは授業に移ります!」

ここに入学してから授業はあったけど、まだ中学の復習って感じだったからなぁ。

本格的な授業は何気に初めてかも。

得に英語は。

「では、14ページのこの文を訳して貰おうかな?」

教科書……………教科書………………え?

あ!!!!!

まさかの英語の教科書じゃなくて、数学の教科書持ってきてしまった!!!!

………………………颯真に見せて貰おうかな。

「あの……………志乃田さ「先生」

「はい。神無月さん」

「ここは新入生代表の挨拶をなさった四ノ宮さんにやらせてみてはいかが?」

はぃ!?

神無月さん!!??

「おぉ!良いですね!外部生の中でもトップな成績だと聞きました。ぜひ実力を皆の前で見せてはくれませんか?」

え!先生も…………!!??

「四ノ宮さん?どうなされたの?」

こっちを見てほくそ笑む神無月さん。

こんなときに限って数学の教科書を持ってきてしまうとは…………………。

「四ノ宮さん?どうしました?」

待ってよ、先生………。

「まさか………………これしきの英文が読めない、とか?」

神無月さんの一言で、辺りがざわつき始める。

「あの………「先生」

「どうしました?志乃田さん」

「実は四ノ宮さん………………」

え、何を言う気なの!!??

まさか、教科書忘れたことを暴露!!?

まって、それなら私が言うって!

「まって…「お昼辺りから具合が悪そうで………。内密に相談を受けてたんです。休むことを勧めたのですが、授業をどうしても休みたくないとのことで…………」

ん?

私、具合悪くないんだけど…………むしろいつもより元気。

「そうなのですか?」

「え…………あの…………」

なんて言ったらいいの?

「と言うことなので、同じA組の委員長として医務室に連れて行ってもよろしいでしょうか?」

「四ノ宮さんは勉強熱心なのね。体調が優れない日ぐらい、休んでも構わないわ。行きなさい」

「それでは」

そう言って私の腕を掴んで立たせる颯真。

状況が掴めていない私。

「具合悪そうなふりをしなさい」

私にしか聞こえない声で、そう言った。

「でも………」

「いいから」

取りあえず、言われたとおり具合悪そうなふりをして、外へ出た。

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