何度でも


「私、具合悪くないわよ」

「英語の教科書忘れただろ」

あ…………バレてた。

「教科書忘れたりなんかしたら、お前も、そしてA組の評価が下がる。だから、退避させたんだ」


あぁ……………A組の評価の為か。

「それはありがとう」

教科書を隣で見せてくれたら、嘘までついて外に出なくても良かったのに。


まぁ、一応助けてくれたしそんなことは言わないけど。

「それより医務室に行くの?」

さっき先生に言っちゃったし。

「あぁ。別に大丈夫だ。どうせ具合悪くないんだろ?この学園は具合が悪いってだけでも大事になる。あとで、良くなったと言えば大丈夫だ」

……………………確かに想像つく。

大型の病院に連れて行かれそうで怖い。


「じゃあ、この2時間暇になるね」

ブラブラしていてバレても困るし、どこかいいところに身を潜めてた方が良いよね?

「じゃあ、僕の部屋で身を潜めてるといい。ここから近いし、集合のホールにも近い」

あ〜…………それなら先生やホテルの人に見つからないで済みそうね。

「分かったわ」

見つからないように階段で上に上がり、階段から近いところに部屋はあった。


_______ピッ。

「ほら、入るといい」

「お、お邪魔します………」

内装は女子と対して変わらない。

向きが違うだけで、後は同じ。


「男の部屋に来たということは、どーゆうことか分かってんの?」

「え?」

うぉ!!!!!

顔近い!!!

このままだとキスされる……………。

「ふんぬ!!」

_______ゴッチン!!

「いてぇ!!!」

思いっきり頭突きをしてやった。

私のヘッドハンティング未だ健在♪

「さっきの声といい、今の頭突きといい……………君本当に女なの?」

「えぇ。生粋の」

「こんな女初めてだよ。あー、頭痛え」

アドリブ過ぎて、颯真の言葉遣いがいつもの感じじゃない。

やっぱ無理してしてたのかな?

「何?」

「今の志乃田くんの方がいいよ」

「?………………っ!!!!」

あ、今気づいたの。

「表の志乃田くんは何て言うか……………空っぽ。感情を誤魔化しているような、見せないように隠しているような」

颯真と出会ったのは2人が保育園生の頃だった。

私の家の隣の空き家に引っ越してきて、子供もそして親同士も歳が近かったこともあって、直ぐに両家は意気投合したのよね。

よくキャンプとかにも一緒に行ったけど、颯真は中々私に他人行儀だった。

もっとフレンドリーに遊びたいのに。

つまらない顔して、遠くから私を見てた。

そのときの颯真と、何か似てるなぁって、今ふと思った。


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