春になったら君に会いたい

「というか、正晴は彼女つくんないのか? 」
「えっ、いや、今のところその予定はないけど」

実はしばらく疑問に思っていたことを聞いてみる。時間的に制限がある俺とのぞみとは違って、正晴は誰かと付き合ってもおかしくはない。モテるのだから尚更だ。

「去年の夏くらいまではいたよな? 別れてから一年ちょいか」
「まあね。……あのときに振られて懲りたっていうのも少しあるよ」

正晴はザッハトルテをつつきながら呟いた。こいつが自分の話をそんなノリでするのは珍しくて、つい色々聞きたくなる。

「前の彼女に未練があったり?」

正晴が付き合ってた相手は、俺の知り合いでもある。中学が一緒だったのだ。美男美女でいかにもお似合いだったし、性格の相性も悪くなかった気がするので、未だになぜ別れたのかよくわかっていない。そのことについて、正晴は濁すだけで話そうとはしてくれなかった。あまり踏み込むのもよくないかと、無理に聞き出そうとしたこともない。だが、正晴がすっきりと別れたわけではないことだけは察していた。

「……ないとは言いきれないかも。俺にはもったいないくらいいい子だったしね。でも、まだ今の俺じゃ、やり直したいなんて言う資格はないから」

寂しそうにそう言った正晴は、それがどういう意味か説明する気はないように見えた。らしくない姿に、やはり追及するのはやめておこうとブレーキがかかる。そもそも俺が聞いてもどうにもならない話だ。無駄に干渉するのもよくないだろう。

< 128 / 203 >

この作品をシェア

pagetop