春になったら君に会いたい


「のぞみ、もしかして眠い?」

だいぶ時間が経った頃、俺はそう尋ねた。さっきまでより若干体温が高い気がするし、瞼もちょっと重そうに見えたからだ。病院内で規則正しい生活を送っている彼女にとって、この時間まで起きているというのはめったにないことなのだろう。

「んん、大丈夫。冬くんが寝るまで起きてる」
「いや、そんなこと言ったって俺が寝るのいつか分かんねえし。眠いんなら病室戻りな」
「日が出てきたらいったん戻るけどー、それまではここにいる」

明らかに眠そうな声に、つい笑ってしまいそうになる。一緒にいてくれるのは嬉しいが、うっかりここで寝てしまったらいろいろと大変である。とはいえ、無理に追い出すのも本意ではない。

「じゃあ日が出る前に俺が寝たら、絶対すぐに病室戻れよ」

結局は甘い対応をしてしまった。本来なら俺が病室まで送ってやりたいが、眠っているのだから当然そういうわけにはいかない。実をいうと、俺も段々と眠くなってきていた。この調子では本当に日が出る前に寝てしまう。これまでの経験則から察するに、もってあと一時間といったところだろう。
 
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