春になったら君に会いたい


「冬くん眠い?」
 
30分も経てば、逆に聞かれる側になっていた。頭がぼっーとして、体が妙に重い。普通の日に眠くなるときと似たような感じだが、抗えない感覚がある。寝転がった方がいいんじゃないか、というのぞみの言葉に甘えてベッドに横になると、もう起き上がれないくらいだった。のぞみは再びベッド横の椅子に腰掛け、今度は俺の左手を握った。

そこから先は、もうほとんど何も分からなかった。のぞみが何が言っていたような気がするが、頭に入ってこない。のぞみの姿もぼんやりとしか認識できない。分かるのは、繋がれた手の温かさくらいだった。


「おやすみなさい、冬くん」

完全に眠りに落ちる直前、ぼんやりとそう聞こえた。優しくて可愛らしい声。俺の好きな声だ。



暗闇の中では、やはり何も聞こえないし、夢を見ることもなかった。

一度だけ、何かが手のあたりに触れた気がする。
だがそれも気のせいだったのかもしれない。


ふわふわと暗闇に浮いたまま、短いのか長いのかも分からないような時間が過ぎていった。




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