春になったら君に会いたい


目が覚めた。部屋の明るさ的におそらく夜なのだろう。ここ数年は昼に起きることが多かったから、なんだか少し新鮮な気持ちになる。

病室には母さんと父さんと正晴がいた。母さんはともかく、父さんまでいるとは思わなかった。仕事は大丈夫なんだろうか。ぼーっとする頭でそんなことを考える。

「あ、起きた」

目覚めた俺に最初に気がついたのは正晴だった。その声につられるように、母さんたちもこっちを向く。久々の寝起きで目が霞むが、とりあえずみんな元気そうだ。

まずは主治医の先生を呼ぶのが決まりだった。いろんな数値やらなにやらを確認して、それを両親に説明する。例年通りの流れで今更新鮮味もない。病室に残されているのは正晴と俺だけである。

「珍しく今年は夜だったね、起きたの」
「そうだな。起きたら外が暗いのなんか久々」

なんでもないような会話はすぐに終わり、無言の時間が流れる。のぞみのことを真っ先に聞きたかったが、なんとなく話題に出せなかった。ここにのぞみがいないことが答えである気がしたし、正晴がこんなに静かなのもそれが原因なんだろうと思った。
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