春になったら君に会いたい
「ねえ、冬」
「なあ、正晴」
沈黙を破ろうとするタイミングが被った。いつもなら目を見合せて笑うところだが、そういう雰囲気ではない。正晴の顔はかなり暗くて、明らかにいつもと様子が違っていた。俺は目配せをして、先に話すように促した。
「……のぞみちゃん、2月の上旬に亡くなったよ」
「そうか」
言いにくそうに告げられた予想通りの内容に、簡単な返事しかできない。いなくなった実感がないからか、悲しみや寂しさはあまり感じなかった。改めて考えてみれば、去年の今日はまだのぞみと出会ってすらいなかった。だから、彼女がいない目覚めの方が自然なのだ。