春になったら君に会いたい

「冬の言ってた公園ってここ?」
「そう。もうちょっと行ったところに入口があるから」

駅からしばらく歩いて、目的地の桜木公園に到着した。入口の辺りが少しぬかるんでいたが、それを越えれば水たまりがいくつかあるくらいで、中に入れないほどではない。公園の端には屋根付きの休憩スペースもあるので、座って食事をすることもできそうだ。



実のところ、もうこの公園に来るつもりはなかった。ここでのぞみと一緒に桜を見る。その願いが叶えられなかった以上、来ても辛いだけだろうと思っていたからだ。彼女との幸せな思い出を、辛い気持ちで上書きしたくなかった。


しかし、確か彼女は、天国から桜を見ると言っていた。別に俺は死後の世界を信じているわけではないが、もし、万が一にものぞみが見ているというのなら、俺が見に行かないわけにはいかなかった。

それと、自分の決意を正晴に伝える機会もほしかった。一人で行く気分でもなかったし、タイミング的にもちょうどよかったので、正晴と花見をするということになったのだ。

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