春になったら君に会いたい
「冬が変わろうとしてるのに、俺が変わらないでいるわけにはいかないからね。ちゃんと決着をつけないと」
正晴がこぼした言葉は、独り言のようだった。だからこそ、本心なのだろうと感じた。俺からしたら、正晴は今の時点で完璧なやつだ。頭がよくて、運動ができて、誰にでも優しくて、見た目だっていい。ここから変わる必要なんてないように思う。
だが、正晴に考えがあって変わろうとしているのなら、俺にそれを止める権利はない。それよりも今すべきことは何か。
「正晴、頑張れよ」
いつの日か正晴がしてくれた応援を思い出した。たまには俺だって正晴のことを応援したかった。
「冬もね」
正晴はゆっくり立ち上がって、公園の真ん中の方へ歩き始めた。地面の水溜まりを避けながら、俺も後を追う。空気はじめじめしているが、そんなに嫌な感じはしなかった。公園のほぼ真ん中あたりで、前を歩いていた背中が止まる。