春になったら君に会いたい



退院してから一週間経った、三月二十一日。


今日は電車に揺られて、ある公園に来ていた。

ここは、桜木公園という名の通り桜の木が多く生えている。だが、近くにあるもっと大きな公園の方が人気があり、こちらの公園に来る人は少ない。

俺はその大きい方に行ったことがないから、そこの桜がどのくらい綺麗なのかを知らないが、俺の中ではこの桜木公園の桜が一番綺麗だ。だから、毎年この公園で花見をすると決めている。


小さい頃は家族で来ることもあったが、最近は必ず一人で来ている。今日もそうだ。正晴はバイト、両親は仕事があって一緒に来ることはできない。それに、俺はこの風景を見ていると、ふいに涙を流してしまうことがあるので、一緒に来たくなかった。


桜の木が見えやすいところにレジャーシートを置いて、その上に座る。周りを見れば、俺以外にも花見をしている人がいた。

嬉しそうだったり、悲しそうだったり、はしゃいでいたり、ひとりひとりが色々な反応を示していたが、きっと誰もがその桜を綺麗だと思っているという気がした。


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